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2005.03.11

『はせがわくんきらいや』長谷川集平

|| ちょっと変わった友達が、ぼくにはいる。

はせがわくんきらいや
ぼく、長谷川くん、きらいや。
何しても下手やし、すぐにへなへなへたってしまう。
長谷川くんといたら、おもろない。
長谷川くんと一緒におったら、しんどうてかなわんわ。
長谷川くん、だいじょうぶか。長谷川くん。

――砂糖菓子のように甘くも美しくもない。ひたすら武骨だけれど、まぎれもない優しさが、そこにはある。
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著者の長谷川集平さんが生まれたのは1955年。
この年、「大きくなあれ」と赤ちゃんにせっせとミルクを飲ませていたお母さんたちから、悲痛な叫びが上がりました。
「まるで栄養失調のように子どもがやせ続け、顔が真っ黒になっていく。子どもを助けて」

森永乳業徳島工場で製造された粉ミルクに大量のヒ素化合物が混入され、西日本を中心にそのミルクを口にした推定2万人以上の赤ちゃんが身体に異常をきたしたのです。125人(1957年当時)の赤ちゃんは亡くなりました。いわゆる「森永ヒ素ミルク事件」です。

長谷川さんも、このヒ素ミルクを3缶飲みました。

モリナガぬきに今の私は語れません。
長谷川さんはそう言います。

障害の残った小学生時代の自らの思い出、亡くなってしまった友達のこと……。そうしたいくつかの体験のなかから生み出されたのが、この絵本です。お話は、ヒ素ミルクを飲んで障害を持った「長谷川くん」と幼稚園の時からつきあってきた「ぼく」が、長谷川くんと過ごす日々の出来事や感じたことを日記風に綴っているという設定。

文章も含めてすべて手書き、黒一色。一見、墨で乱暴に描き殴られているかのように見える強烈な個性を持った絵と文字は力強さと躍動感にあふれ、息をのむほどのインパクトを持って迫ってきます。

「ぼく」が長谷川くんに向ける言葉は容赦がありません。「ぼく」は長谷川くんのことを、こんな風に作文に書きます。

ぼくは、はせがわくんが、きらいです。はせがわくんといたら、おもしろくないです。なにしてもへたやし、かっこわるいです。はなたらすし、はあがたがたやし、てえとあしひょろひょろやし、てえとあしひょろひょろやし、めえどこむいとんかわからへん。
だけど「ぼく」は、いつだって長谷川くんのそばにいて、困っている時には手を差し伸べるのです。「長谷川くんなんか、大だいだいだいだあいきらい」と言っても、どうしても放っておくことができないのです。

思ったことを素直にそのまま長谷川くんに伝えられるのは、「ぼく」が一人の対等な友達として長谷川くんと真っ正面から接しているからです。「体の弱い人はいたわりましょう」と親や学校の先生に教えられたから優しくするというような甘っちょろい感情は、彼にはありません。長谷川くんと一緒にいるのは同情でも哀れみでもなく、長谷川くんはただそのままで「ぼく」の「ちょっと変わった友達」なのです。だから発する言葉とは裏腹に、彼に対する「ぼく」の眼差しはどこまでも優しさに満ちているのです。

いろいろな個性を素直に受け止めて、ともに過ごしていく懐の広さは、大人なんかより子どものほうがずっと持ち合わせているのかもしれません。

長谷川くん もっと早うに走ってみいな。
長谷川くん 泣かんときいな。
長谷川くん わろうてみいな。
長谷川くん もっと太りいな。
長谷川くん ごはんぎょうさん食べようか。
長谷川くん だいじょうぶか。
長谷川くん。
わが家の長男@4歳5カ月には、まだまだ理解できない部分がたくさんあるでしょう。けれども思わず手に取り、耳を傾けてしまう力が、この絵本にはあります。特別な解説はもちろんしないけれど、心の中でこんな風につぶやきながら、時折「よんで」と催促する長男に、この絵本を読んであげます。

――一つの言葉には、いろいろな思いが含まれているんだよ。
「きらい」と言ったからって、本当に嫌いなわけじゃないこともあるんだ。
思っていることと違うことを、つい口にしてしまうこともあるんだ。
世の中にはいろんな人がいて、みんなが自分と同じようにできるわけじゃないんだよ。
友達と一緒にいたって、「面倒だな」「おもしろくないな」と思ってしまうこともある。
友達を「かっこわるい」と思うこともある。
けれどもなんだか放っておけない、それが友達なんだよ。――

この絵本は2度の絶版を経て、2003年、「復刊ドットコム」というサイトを運営しているブッキングから復刊されました。3度目の絶版はないことを、切に祈らずにおれません。次代に必ず残したい絵本の一つです。

読み聞かせは4歳ごろからどうぞ。

オススメ度
よん(母)------------------> ★★★
ルンバ(長男/4歳5カ月)-> ★★☆

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▽ 長谷川集平(作)/ブッキング(2003/08/15 1976年すばる書房より刊行→1993年温羅書房より刊行)/印刷製本:シナノ
▽ 漢字/32ページ/31cm

長谷川集平(はせがわ・しゅうへい)プロフィール:絵本作家・ミュージシャン。京都造形芸術大学客員教授。1955年4月19日、兵庫県生まれ。1977年、武蔵野美術大学中退。76年『はせがわくんきらいや』でデビュー、一躍注目を浴びる。続く『とんぼとりの日々』(77年)と並んで、独自の画法・言葉遣い、鋭い人間への問いかけで絵本の転機をもたらす。『トリゴラス』(78年)の少年の内面の表現、『たかし、たかし』(80年)のナンセンス性、『日曜日の歌』(81年)の哀歓は絵本の可能性をひろげたものといえる。一方、小説・児童文学にも挑戦し、『夢の隣』(82年)、『見えない絵本』(89年)など刊行。『絵本づくりトレーニング』(89年)は、その絵本論であり実作作法案内でもある。(『朝日人名辞典』より)
▽公式サイト:シューヘー・ガレ−ジ

▼関連情報
「ヘイ、らっしゃい!」著者本人が復刊に寄せたメッセージ:復刊ドットコム
森永ヒ素ミルク事件 被害者を守る会県本部結成35年 2003年7月12日付徳島新聞

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Comments

私好みの絵と内容かも!
図書館にあるかな~?

Posted by: bamu | 2005.03.11 at 12:00

▼bamuさん
この絵本はすごいです!!!
ぜひご覧になってみてください。
図書館にきっとあると思います。

Posted by: よん | 2005.03.11 at 23:16

おひさしぶりです。
この絵本、コメントしないわけにいきません。
ワタシにとっては、この絵本によって児童文学を見直すキッカケをつくってくれた本だからです。
この本がはじまりだったのです。
TBさせてくださいね。
--(や)--

Posted by: 山猫編集長 | 2005.03.13 at 15:56

▼山猫編集長
トラックバックありがとうございました。
レスが大変遅くなり、申し訳ありません。

この絵本は本当にすごいですよね。
「きらいや」という言葉の裏にある、子どもの複雑な気持ち…。
最後の絵には泣かされます。
すばる書房版もお持ちなんですね!
復刊されて、本当に良かったと思います。

Posted by: よん | 2005.03.26 at 01:10

「水曜通信」のsukiです。はじめまして。

この記事に勝手にトラバさせていただいたんですけど、手違いで重複登録されたようです。お手数ですけど、1つだけ残してあとは捨てちゃってください。スイマセン。

Posted by: suki | 2005.05.02 at 21:07

長谷川君 怒鳴れ野獣のように

長谷川君  自分を隠すなよ

長谷川君  1ごとずつ身体からはっきり出せよ

かっこいい

長谷川君  自分を伸ばす今の長谷川君大好き

長谷川君   じゃ

Posted by: 小澤  理 | 2005.08.18 at 23:42

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