『かいじゅうたちのいるところ』モーリス・センダック
うーん、失敗しました。『絵本をよんでみる』での五味太郎さんたちの深読みを見てこの絵本を読みたくなったのですが、頭の中に五味さんの解釈があるものだから、その先入観のもとでしか見られない。もっとまっさらな状態で読んでみたかったです。ということで、もし『絵本をよんでみる』を読もうと思っている方がいらしたら、まず先に取り上げられている絵本たちに目を通してからにしたほうが楽しいと思います。
さて。
いたずらが過ぎたおしおきで閉じ込められた寝室から怪獣たちのいるところへと航海し、怪獣の王様になって好き放題に暴れるマックス。この怪獣たち、
すごい こえで うおーっと ほえて、すごい はを がちがち ならして、すごい めだまを ぎょろぎょろさせて、すごい つめを むきだした。と文章にあるけれど、 その姿はなんだかユーモラスで、ちっとも恐ろしい感じがしません。マックスもこわがるどころか、「やれやれ」というような顔で出迎える彼らを一瞥し、怪獣ならしの魔法で手なづけてしまうのです。
思う存分大騒ぎを楽しんでいるうちに、暴れるのにも飽きてしまったマックスは、怪獣たちに自分がお母さんに受けたのと同じ「夕ごはん抜きで眠らせる」という仕打ちをしてみますが、気が晴れるどころか、お母さんのところへ帰りたくなります。泣いて引き止める怪獣たちをそでにして、マックスは無事、もとの寝室へと戻っていくのです。
普通ならばこれは、「閉じ込められたマックスが眠っている間に見た楽しい夢」ととられるお話でしょう。けれど、気になることが一つ。怪獣たちのところに行く前、マックスの寝室からのぞいていた月は三日月だったのに、戻って来たときのそれは満月になっているのです。
「それじゃあ、マックスが怪獣たちの所に行ってきたのは本当の出来事だったのか…? 怪獣たちは本当にいるのだろうか」
そんな不思議な読後感に包まれる絵本です。
そもそも子どもには「夢オチ」なんてない。絵本の中に描かれていることはどんなに突飛な出来事だとしても、子どもにとっては現実の出来事のようなものなのですから、月を変化させたのはセンダックが「夢オチではない?」と大人に気づかせようと考えたからなのかもしれません。
だいたい、怪獣たちのところに行って帰ってくるマックスの様子が妙に手慣れています。寝室ににょきりにょきりと木が生え、森になってしまったら、もっと仰天しても良さそうなものなのに、「フフフフ、いつものあれが始まったぞ」とでも言いたげにほくそ笑んでいる。寝室に戻ったときにも「やれやれ、今回も終わったぞ」という感じに慣れたしぐさです。どんな子どもたちにも「かいじゅうたちのいるところ」はあって、大人の知らないところで、子どもたちはしょっちゅうその場所に遊びに行っているのかもしれないですね。
もちろん長男はそんな風に深く考えずとも、この絵本を楽しんでいました。すぐれた画面構成とお話にぐいぐいと引き込まれ、怪獣たちが登場するところで「わあーっ」と目を輝かせて、その王様になってしまうマックスに、さらに夢中になったよう。いきいきと快活な怪獣おどりも見ていて楽しい。3歳半の長男は、いたずら盛り、強い者に憧れる盛り。こういう冒険は彼にとってたまらない世界なのでした。
▼オススメ度
よん(母)------------> ★★★
ルンバ(長男/3歳)-> ★★☆
▼『かいじゅうたちのいるところ』詳細 >>amazon >>bk1
▽モーリス・センダック(作)じんぐう てるお(神宮輝夫)(訳)/冨山房(1975/12/5)
▼関連情報
▽ぬいぐるみ。怪獣たちにもそれぞれ名前がついているんですね。

▽こんな商品もあってびっくり。マックスの着ていた、おおかみのぬいぐるみです。それだけ人気の定番絵本ということですね。







Comments
楽しく拝見しています。
三日月が満月になったのはマックスがかいじゅうおどりを始めた直後ですね。
このとき、かいじゅうたちは月に向かっておどっています。
実はマックスはこの前にもかいじゅうおどりを一人で踊っているようです。
三日月に向かって、読者に背をむけて踊っている図がありますよね。
なにか、マックスの楽しさのバロメータを表しているような気がします。
このかいじゅうたち、センダックが言うには近所のおばちゃんだとか。ガハハと笑って楽しくて、時々ぎょろっとした目で怒るので恐くてと、センダックが子どもの頃に感じたおばちゃんの図らしいです。なるほど夢に出てくるかいじゅうのイメージがおばちゃんとは子どもらしいですね。
さて、五味太郎氏の解釈は読んでいませんが、子どもは直裁的ですからおもしろいものはおもしろいんですよね。結局深い解釈というのは、昔子どもだった大人たちのためのものかもしれません。
Posted by: iFinder | 2004.03.28 at 09:07
>iFinderさん
こんにちは!わたしもいつも楽しく拝見しています。
>マックスの楽しさのバロメータを表している
なるほど〜。細かく見れば見るほど、いろいろな解釈ができて
おもしろいですね。
>このかいじゅうたち、センダックが言うには近所のおばちゃんだとか。
確かに髪型がおばちゃんっぽい怪獣が(笑)
近所のおばちゃんがモデルだったんですね。
実は五味太郎さんの解釈というのは、怪獣は母親だというものだったんです。
ほかの解説書でも、そういう解釈を読んだことがあります。
男の子が抱く、母親への反抗と甘えを描いている作品、と…。
>子どもは直裁的ですからおもしろいものはおもしろい
そうなんですよね〜。
子どもは本能の部分で絵本を楽しんでいますからね。
大人はその本能を失ってしまっていたりするから、
理屈をつけて、これがよい、あれがよいと言いたがるんでしょうね。
(わたしも含めて)
Posted by: よん | 2004.03.30 at 21:05
こんばんは。はじめまして! BK1のトラバで拝見して、やってきました~。
「かいじゅうたち」ですが、月の形が変わっていたの、気づきませんでした!
うーん、では、お母さんはいつからご飯を作りつづけていたんだろう・・・。
謎がいろいろ深まります。
Posted by: ash-tree | 2005.08.09 at 23:54